Paul Harnden ポール ハーデン
Paul Harnden Shoemakers(以下ポールハーデン)ははじめはシューメーカーとしてスタートしたブランドです。だから名前に「Shoemakers」とあるんですね。
彼はもともとイングランドの老舗シューメーカー「John Lobb(ジョン・ロブ)」で木型職人として働いた経歴を持ちます。
キャリアは長く、今年2017年でちょうど30周年を迎えます。
彼のプロダクトはとにかくクラシックで自然的。ハンドメイドにこだわったモノづくりにも根強いファンを持ちます。
現在は靴だけでなくアウターやシャツ、トラウザーズからバッグなどの小物類まで展開しています。
このブランド、筆者も大好きなブランドなのですが、如何せん高い!!
ジャケットで約300,000円、パンツでも200,000円くらいはします。
なぜこんなに高いのか??
これほどまでに高い理由を一緒に見ていきましょう!
ポールハーデンの希少性
まず、ポールハーデンは限られた少数の店舗でしか取り扱いがありません。
パリのL'ECLAIREUR、NYのIf SoHoなど、海外では数えるくらいの店舗での販売。
日本は取り扱い店舗数が多い方ですがそれでも他ブランドと比べればかなり少ないです。
そして、ネットに商品画像が上がらないことでも有名です。
店頭に行かないと商品を見ることもできないんですね。
しかも生産量が極端に少なく、シーズンに数点しか生産されていない、というアイテムもあるほど。
それゆえ二次相場でも高値で取引されています。
・・・ん?
希少だからこんなに高いってこと??
いえいえ、なにもわざと生産数を絞って価値を上げているわけではないんです。
その秘密は、生産背景にあります。
100年前の織機
ポールハーデンの生地のいくつかは19世紀後半に設計デザインされた織機、ドブクロス織機を使って織られています。
現在この織機を使っているところはほぼありません。ものすごーく旧式の織り機と思っていただければ。
今の織機はミクロ単位まで設定が可能ですが、このドブクロス織機はラトルフィットと呼ばれる糸ごとの隙間を開けた設定で織ります。というより、そうでないと織れないそうです。
横糸を木製のシャトルで1分間に100ピックの速さで打ち込んでいくのですが、この速さでは、1日にたったの40mしか織れません。(現代のエアージェット織機だと250mくらい織れます)
さらに、100年前に作られた織機ですから問題点もいくつかあります。
まず、織機を動かすエンジンを作っている企業が廃業してしまっているそうです。ということはいつ動かなくなるかわからない、ということ。
一部の部品が壊れた際は注文できるようですがものすごく高価なので使い続ければ使い続けるほどコストがかかります。
そして織られた生地は売れ筋とはまったく異なる、ローテクな生地。
そりゃあ高くなるのも頷けます。
ただ、この生地の風合いは絶対にこの織機でないと出せません。
横糸の打ち込み速度が高速になればなるほど、糸1本1本にかかるテンションが強くなり、ウール本来の弾力性や風合いを出しづらくなってしまいます。
ゆっくりゆっくり横糸を打ち込むからこそこの風合いが出せるんですね。
さらに、シャトルで横糸を打ち込んでいくときに糸同士が擦れ合うことも生地に柔らかな風合いを与えています。
最近では織り上がった後のフィニッシング技術が進歩しているので、見た感じ・触った感じはパッと見は同じようですが、
表面的に加工したものと、本来持つ特性がそうであるものとでは着込んでいったときに差が出てきます。
ポールハーデンの生地が全てこの織機で織られたものではないですが、このブランドを象徴する生地であることは間違いないでしょう。